[ログ] 『運用記録』
- Toma Higa
- 1月10日
- 読了時間: 3分
20xx.6.6
『シリアルナンバー89:Echo』の実戦における試験運用の許可が下りる。
作戦を滞りなく遂行するために『Echo』がかつて所属していた部隊『[編集済み]』に配属させた。
[編集済み]部隊が参加予定の作戦のブリーフィングに出席させる。本ブリーフィングにおいて把握能力や対人関係について問題は見られなかった。
作戦に参加させることを本決定とする。
20xx.6.7
メンターとの面談記録
[落ち着いたブルーグレーのシャツを着た細身の男性が映り込んだ画面から録画が開始される]
メンター:これから『Echo』と面談する。彼のメンタルを補助する役割の他、共同研究機関への情報提供として記録することとなっている。
[机の上に置かれた後、数回ドアをノックする音]
メンター:『Echo』だね?入って大丈夫だよ
Echo:失礼する
[扉を開閉する音、大柄な男が部屋に入る様子]
メンター:そしたらそこの椅子に座ってもらって
Echo:了解
[机を挟んで向かい合うように席に着く様子]
メンター:先に、この面談は記録されていることとその記録は情報提供に使用されることを了承してくれるかい
Echo:構わない。自分にはそれを拒否する権利がありません。
メンター:わかった、そしたらまずは……
(中略)
メンター:ところで、古巣に顔馴染みは居たかい?
[少しの沈黙、データベースの照合をしている様子に見える]
Echo:いいえ、居ませんでした。しかしそれが作戦に影響を与えるとは考えられません
メンター:なるほど、君のかつての同僚は……
[言い淀むメンターに対してEchoが発声]
Echo:おそらくほとんどが殉職しているでしょう。それらについて自分は悲しいと感じることが適切であると判断します。
メンター:ふむ……
[椅子が軋む音、メンターが腕を組んで考えるような姿勢をする]
Echo:失礼、今の内容については述べるべきではありませんでした。彼らには哀悼の意を捧げたいと思います。
[しばらくの沈黙]
メンター:そうか……大丈夫そうだ。時間だし、今日はここで終わりにしよう。
Echo:ありがとうございます、メンター。それでは失礼する。
[Echoが退室、メンターがカメラの電源を切る]
メンターによる所感
「僕は今まで数えきれないほどの職員と話をしてきたが、彼ほど冷静で動じない人は初めてだ。彼は元々人間だったとは聞いているが、あれは……本当に人間だったのか?」
20xx.11.4
人間と遜色のない戦闘能力を発揮、期待された戦果を上げる。
20xx.11.8
[編集済み]に対する尋問及び殺害を含めた作戦を命令した。対象への憐れみや同情などの感情の動きは見られず、最終的に[編集済み]を殺害し作戦を完全遂行した。
20xx.12.17
作戦中に電波妨害によって「Echo」との通信が途絶えた。数時間後、通信が復旧したが「Echo」のバイタルは異常な値を出していた。
20xx.12.20
作戦に参加させる。今までには見られなかった作戦参加に対する消極的な反応。
バイタルに異常値は見られなかったが、パフォーマンスが落ちていた。
20xx.12.xx
作戦参加を拒絶。
20xx.1.xx
作戦参加を拒絶。
使用する銃を持たせたところ、バイタル値と感情規制システムに異常が見られた。
20xx.2.xx
作戦参加を拒絶。
[編集済み]
『シリアルナンバー89:Echo』の運用の中止を決定。